温もり(PHPより)

PHPより記事を抜粋しております。

北風が、窓を鳴らす。布団のの中で耳を澄ませば、風の向こうに電車の音がかすかに聞こえてくる。

 そんな時、長い間おもいだすことのなかった遠い過去の様々な景色や、懐かしい人の顔がふと浮かんで、無性にさびしく、人恋しくなってくる。あの人は今、どこで何をしているのだろう。

 思えば今まで、数えきれないほど多くの人と巡り合った。旅先で、ただ一度まみえた人もいれば、ある時期、親しく交わった人もいる。共に過ごした時間はわずかだけど、印象深く、忘れがたい人もいる。

 人はそれぞれに、そうした人たちとの大切な景色を、心の底にしまいこんで生きているのではないか?

時にぬくもりに浸るのも良い。これまで交わった人たちのぬくもりがよみがえってきて、自分は一人ではないことに気づかせてくれる。そして、凍てついた心にともしびをともし、明日を生きる力を与えてくれるだろう。

 願わくば自らも、誰かにどこかでおもいだされ、その人の心を温かさで包む、そんな人でありたい。